はじめに
本書の演習で Raspberry Pi Zeroシリーズを用いる方法はサポートページで解説すると述べました。本ページにでその解説を行います。Raspberry Pi Zero W 系 (以下 Pi Zero W 系) の機種では、GPIO ポートにピンヘッダが取り付けられた Raspberry Pi Zero WH (以下 Pi Zero WH) が最も簡単です。ピンヘッダが取り付けられていないと、本書で用いるオス-メスタイプのジャンパーワイヤを用いることができません。
なお、Pi Zero W の後継である Pi Zero 2 W も登場しており、ピンヘッダが取り付けられた Pi Zero 2 WH も販売中です。
また、Pi Zero W 系の機種は、搭載メモリ量が 512MB と少ないためデスクトップでブラウザを使うのにも支障が出るレベルです。ですので、Pi Zero W 系の機種は「デスクトップなど不要」と思えるような上級者向けのものだと考えるのが良いと思います。
Pi Zero W 系を含めた Raspberry Pi の種類と、それを購入できるサイトへのリンクを 「Raspberry Piではじめる機械学習:Raspberry PiへのOSのインストール方法」の冒頭部にまとめてありますので、参考にしてみてください。
周辺機器の接続方法
Pi Zero 2 Wと周辺機器との接続は下図のようになります。 図からわかるように、以下のものが必要となります。- HDMI(メス)-ミニHDMI(オス)変換アダプタ。例えばエレコム HDMI 変換 アダプタ hdmi to mini hdmi
- USB OTGケーブル。例えば iBUFFALO BSMPC11C01BK
- USBハブ(ACアダプターなしのバスパワータイプでOK)。 2つ以上のUSB機器(例えばマウスとキーボード)を接続する場合には必要です。
なお、microSD カードはなるべく高速で高性能なものを使うことをお勧めします。Zero 系の機種はメモリが512MBしか搭載されておらず、microSDカードをメモリの代替として用いる「スワップ」という技術が多用されるためです。
なお、ピンヘッダが取り付けられていない Pi Zero 系の機種で電子工作の演習を行いたい場合、以下の方法がありますが自己責任でお願いします。
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まず、下記のようなテストワイヤをGPIO部の穴に差し込んで使うという方法がまずあります。ただし、これはあくまでテスト用であり、本書のように何度もGPIOを利用する場合、何度も抜き差しすることで接触が悪くなることが考えられるためお勧めできません。
- それ以外には、下記のように 40 ピンのピンヘッダをハンマーで打ち込む GPIO Hammer Header という製品があります。日本のサイトでは売り切れの場合もありますが、下記のスイッチサイエンスでは、定期的に入荷するようです。
なお、amazon.co.jp でも買えるようですが、レビューを見る限り装着に必要な治具 (Jig) が付属しない可能性があり、お勧めしにくいです。
海外通販を利用できる方なら、公式から Jig つきのもの Pimoroni: GPIO Hammer Header (Solderless) – Male + Female + Installation Jig を購入するのも良いでしょう。 治具 (Jig) の利用法はこちらで見られます。
- 最後に、ピンヘッダ 2×20 (40P)を半田付けする方法です。半田付けが得意な方以外にはお勧めできません。 個人的な感想ですが、一般的なセンサモジュールなどよりも半田ごてで熱すべき時間が長く、かなり難易度が高いと思いました。
本書の演習の実行について
Pi Zero W 系の機種を用いて本書の演習を行う場合、注意が必要なのは下記となるでしょう。- 5.6 カメラのシャッターの演習:カメラモジュールを接続するための専用ケーブルが必要
- 5.7 MP3ファイルの再生:オーディオジャックがないので、音声はHDMI経由のみでの出力となるでしょう
- 6.5 音声のボリューム:同様に音声はHDMI経由のみとなるでしょう
- 10.4 キャタピラ式模型へのカメラの搭載:カメラモジュールを接続するための専用ケーブルが必要
- Raspberry Pi Zero用カメラケーブル:スイッチサイエンス
- Raspberry Pi 5 FPCカメラケーブル(200mm):スイッチサイエンス / 秋月電子通商
- Raspberry Pi 5 FPCカメラケーブル(300mm):スイッチサイエンス / 秋月電子通商
- Raspberry Pi 5 FPCカメラケーブル(500mm):スイッチサイエンス / 秋月電子通商
10.4 節のカメラ付きキャタピラ式模型を Pi Zero 2 W で実現したのが下図の画像です。Pi Zero を用いるメリットは、模型に搭載する回路が若干コンパクトになることと、低消費電力のため Pi Zero に電源を供給するモバイルバッテリーの性能が低くても良いことです。ここでは、5V/1A のモバイルバッテリー(10年以上前に購入した Panasonic QE-PL102)を用いましたが、問題なく動作しました。ただし、Pi Zero 2 W は最大 2A の電流が流れるそうなので、もう少し良いモバイルバッテリーを用いた方が良かったかもしれません。
デスクトップやブラウザの利用に関する注意
本書で学習する場合、「デスクトップでブラウザで補足ページを開きコマンドなどをコピーしてターミナルに貼り付ける」というスタイルで学習するのが最も容易です。しかし、Pi Zero 系の機種の計算能力では、ブラウザがまともに動作しないことが多いと思います。ページ表示の待ち時間が長く、十分な時間待ったとしてもページが表示されるとは限らない、というのが主な症状です。
さらに、そもそもグラフィックをもったデスクトップを利用すること自体、OS が新しくなるとともに厳しくなっています。
これらの問題は、 Pi Zero W 系の機種のメモリが少ないことが原因と思われます。
以上から、Pi Zero 系の機種ではブラウザの利用をあきらめ、 「ディスプレイ・マウス・キーボードを接続せずにRaspberry Piを利用する~SSH編」の解説に従い、 Windows や macOS から Raspberry Pi へターミナルソフトウェアでログインして利用する、という方法を用いるのが現実的です。 この方法を用いると、電子回路の制御には Pi Zero W 系の機種を用い、補足ページの閲覧は Windows や macOS を用い、コマンドの貼り付けはターミナルソフトウェア経由で行う、ということが可能になります。
さらに、「Raspberry Pi をヘッドレスでセットアップする」に従うと、OS のインストールの段階から ディスプレイ、マウス・キーボードを接続せずに Raspberry Pi を利用することが可能になります。
とはいえ、これらの方法は Linux に慣れている人向けの方法です。ですから、Pi Zero W 系の機種は初心者向けとは言い難いところがあります。
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